はじめに
毎年 3 月ごろ、給与計算ご担当者の方は同じ作業を繰り返されています。
- 全国健康保険協会 (協会けんぽ) の都道府県別料率表をダウンロード
- 厚生年金保険料率を確認 (現行水準で据え置かれていますが、過去には毎年改定されていた経緯あり)
- 雇用保険料率を確認 (一般 / 農林水産・清酒製造 / 建設 の 3 区分、毎年改定の可能性あり)
- これらを給与計算ソフトに反映
- 4 月以降の給与計算で適用開始
niyase ではこのうち「ソフトへの反映」を、お客様側でやっていただかない設計にしました。本記事では、その内部の作りと、令和 8 年度 (2026 年度) の値の扱いをお伝えします。
健康保険料率 — 47 都道府県でそれぞれ違う
健康保険料率は協会けんぽの都道府県別に毎年改定されます。例えば令和 8 年度 (2026 年度) では、都道府県によって以下のような差があります。
| 都道府県 | 令和 8 年度料率 (例) | 介護保険第 2 号被保険者 |
|---|---|---|
| 北海道 | 10.21% | +1.59% |
| 東京 | 9.91% | +1.59% |
| 大阪 | 10.32% | +1.59% |
| 福岡 | 10.30% | +1.59% |
(上記は例示で、実際の値は協会けんぽの公式発表をご確認ください)
「うちは東京の本社で給与計算しているが、北海道支社の従業員もいる」というケースでは、従業員ごとに所在地に応じた料率を適用する必要があります。会社単位で 1 つの料率を当てるわけではありません。
niyase では都道府県別の料率履歴として、47 都道府県 × 年度別の料率 をすべて保持しています。従業員プロファイルに紐付いた都道府県情報から、その月の料率を自動で参照します。
健康保険組合 (協会けんぽではなく独自組合) を使われているお客様の場合は、組合ごとのカスタム料率を別途設定可能な作りにしています。
厚生年金保険料率
厚生年金保険料率は、2017 年 9 月以降 18.300% という現行の上限水準で据え置かれています (労使折半なので、個人負担は 9.150%)。これは段階的な引き上げの上限に達した結果ですが、将来の法改正で変動する可能性は残ります。
過去には段階的な引き上げが行われており、今後も変わりうる前提で扱うべき値です。そのため niyase では、公的な法定料率の年度別履歴として 年度ごとの値 を保持しています。据え置かれている年であっても、その「その年度に適用された値」を年度ごとに記録しておく、という設計です。
雇用保険料率 — 業種 3 区分
雇用保険料率は事業の業種によって 3 区分があります。
| 区分 | 事業内容 |
|---|---|
| 一般の事業 | 上記 2 つに該当しないすべて |
| 農林水産・清酒製造の事業 | (特例業種) |
| 建設の事業 | (特例業種) |
労使折半ではなく、事業主負担が労働者負担よりやや多い構造です。料率は毎年厚生労働省から発表され、4 月から翌年 3 月までの 1 年間で適用されます。
niyase では業種区分を会社プロファイルに保持し、給与計算時に自動で対応する料率を適用します。
「2026 年度の料率に対応していない」事故をなくす設計
このタイプの法令対応で起きがちな事故は次のパターンです。
- 給与計算ソフトの料率テーブルが古いまま
- ご担当者が毎年手で更新するルールだが、忘れていた
- 4 月の給与計算で前年度の料率が使われ、後から差額調整に追われる
niyase ではこのリスクを下げるため、以下のような作りにしています。
1. 管理コンソールから「公的料率」を年度別に管理
私たち niyase 側 (管理コンソール) で、新年度の料率が公表され次第、法定料率マスタと都道府県別の料率履歴を更新します。お客様側で料率の保守をしていただく必要はありません。
2. スクレイピングが困難な場合の手動アップロードも併用
協会けんぽの料率表は PDF + Excel の混在で、毎年フォーマットが微妙に変わります。完全自動スクレイピングは脆弱なので、「URL から Excel をダウンロードして管理コンソールにアップロード」 のフローも管理者向けに用意しています。
これにより、新年度の発表から niyase での反映までの遅延を最小化しています。
3. 年度別履歴の保持
過去の料率も全て履歴として残しているため、過去月の遡及計算 (例: 訂正処理や対象月の変更など) でも正しい料率が適用されます。
「3 月分の給与を 5 月に追加修正したい」というようなケースで、3 月時点の料率に戻って計算できます。
令和 8 年度 (2026 年度) の対応状況
ベータリリース時点で、令和 7 年度 (2025 年度) と令和 8 年度 (2026 年度) の両方の料率をあらかじめ登録済みです。
- 健康保険: 47 都道府県分 × 介護保険第 2 号被保険者の有無
- 厚生年金: 18.300% (現行水準で据え置き)
- 雇用保険: 一般・農林水産清酒製造・建設の 3 区分
何か新しい改定があった場合、私たち niyase 側で即時反映する運用です。
おわりに
社会保険料率の対応は、給与計算ソフトとして「できて当たり前」の領域です。それを実現するために、私たちは内部で年度別履歴 + 47 都道府県別 + 業種別という、3 軸のマスタテーブル設計を採用しています。
niyase クラウド (各種セキュリティ認証を準備中です) のご契約のお客様は、お客様側でこれらを意識いただく必要はありません。給与計算メニューで日付を指定すれば、その時点で適用される料率が自動で使われます。
私たちは派手なことを訴求するつもりはありません。当たり前のことを当たり前にやっている、その結果として安心していただける、というのが目指している姿です。